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筋トレとピラティス、どちらの方が効果があるのか?

筋トレとピラティス

「ジム(筋トレ)とピラティス、どっちが効果ありますか?」これは本当に多い質問です。

結論から言うと、

「どっちが“上”か」ではなく、「目的や体の状態によって最適解が変わる」

というのが、現時点のエビデンスと現場感覚を合わせた、いちばん現実的な答えです。

  • 肯定的な面:

    • 筋トレは「筋肉量アップ・代謝アップ・脂肪燃焼」に強い

    • ピラティスは「姿勢・痛み・体の使い方の改善」に強い

  • 否定的な面:

    • 筋トレだけでは、姿勢や痛みがむしろ悪化することもある

    • ピラティスだけでは、大幅な減量は起こりにくいケースも多い

  • 現実:

    • どちらも“合う人と合わない人”がいて、やってみないと分からない部分もあります。

    • 研究結果も統一されているわけではなく、「こういう可能性が高い」というレベルの話も多いです。

ここからは、**科学的なデータ(論文・ガイドライン)**を引用しながら、なるべく分かりやすく整理していきます。


1. そもそも「筋トレ」と「ピラティス」は何が違うのか?

1-1. 筋トレ(レジスタンストレーニング)とは?

アメリカスポーツ医学会(ACSM)は、レジスタンストレーニング(筋トレ)が

  • 筋力・筋持久力の向上

  • 体脂肪の減少

  • 心血管・代謝・高齢者の機能維持など、健康全般に幅広いメリットをもたらすとまとめています。PubMed+1

最近のシステマティックレビューでも、筋トレが

ざっくり言うと:→ 「筋肉を増やして代謝を上げる」「体を“強くする”」運動です。


1-2. ピラティスとは?

ピラティスは「コア(体幹)」「姿勢」「呼吸」「コントロール」にフォーカスした、マインドフルなエクササイズと定義されます。PubMed

  • マット上で行うもの

  • リフォーマーなど専用マシンを使うもの

どちらもありますが、共通するのは

「体の使い方・姿勢・動きの質」を整えるエクササイズという点です。

最近のレビューでは、ピラティスが

  • 姿勢の改善

  • 脊柱の変形(側弯など)の改善

  • 痛み・生活の質の改善に効果的という結果も出ています。BioMed Central+1

ざっくり言うと:→ 「体を整え、動きやすくする」「姿勢・痛み・体幹を整える」運動です。


2. 「痩せる」「体脂肪を落とす」効果の比較

2-1. 筋トレの“ダイエット効果”

2022年のメタ分析(89本の研究)では、筋トレが

  • 体脂肪率:約2〜3%減少

  • 体脂肪量:数kgレベルの減少

  • 特に「筋トレ+食事制限」の組み合わせで効果が最大という結果でした。Wiley Online Library+2PubMed+2

また、最新の研究では

  • 筋トレは有酸素運動と同程度に体脂肪率を減らせる

  • 有酸素や両方(コンカレント)は「脂肪量そのもの」を落とす効果がやや高いという報告もあります。Nature+2MDPI+2

肯定的に言えば:

  • 「しっかり体脂肪を落としたい」「基礎代謝を上げたい」なら、筋トレはかなり強力なツールです。

否定的・注意点としては:

  • フォームが崩れたまま重い重量を扱うと、関節への負担が大きく、痛みやケガに繋がるリスクがあります。

  • 食事が乱れたままだと、「筋肉は増えたが体脂肪はあまり減らない」というパターンも起こり得ます。


2-2. ピラティスの“ダイエット効果”

2021年のメタ分析(11本のランダム化比較試験、393人)では、

  • 体重:平均−2.4kg

  • BMI:平均−1.17

  • 体脂肪率:平均−4.22%と、過体重・肥満の成人に対して、ピラティスが有意に体重・体脂肪を減らすという結果が出ています。PMC+2MDPI+2

また、マットピラティスのトレーニングで

  • 体脂肪率・内臓脂肪の減少が見られたが、中止すると元に戻った、という報告もあります。サイエンスダイレクト

一方で、

  • 高齢女性に半年間ピラティスを行っても、骨密度・脂肪分布に有意な変化がなかったという試験もあり、結果が一貫しているとは言えません。ResearchGate

肯定的に言えば:

  • 特に運動不足・肥満傾向の人にとって、ピラティス“だけ”でも体重・体脂肪が改善する可能性があります。

否定的・注意点としては:

  • 強度がそこまで高くないため、短期間で「−10kg」などの大幅減量を狙うにはパワー不足なことが多いです。

  • 体重よりも「姿勢」「ライン」「動きやすさ」の変化の方が目立つケースが多く、「数字だけで変化を見たい人」は物足りなさを感じるかもしれません。


2-3. 痩せるだけで見ると、どちらが有利?

白黒はっきり言うなら:

  • 「体脂肪ゴリゴリ落として見た目を大きく変えたい」 → 筋トレ+有酸素+食事管理が主役

  • 「運動が初めてで怖い・姿勢や腰痛も気になる」 → ピラティスから始めた方が現実的

現実としては:

  • 「ピラティスだけ」「筋トレだけ」よりも、ピラティスで土台を整えつつ、筋トレで代謝と筋量を上げるという組み合わせがいちばん理にかなっている、という可能性が高いです。


3. 姿勢・痛み・動きやすさの改善効果

3-1. ピラティスの強み:姿勢・慢性腰痛

近年のシステマティックレビューでは、ピラティスが

  • 脊柱の変形(側弯など)の改善

  • 姿勢改善

  • 痛みの軽減と機能向上

  • 生活の質の改善

に有効という結果が報告されています。BioMed Central+1

慢性腰痛に対しては、さまざまなコアトレーニングを比較したネットワークメタ分析で、**「痛み・障害度の改善において、ピラティスがかなり高い順位にある」**という結果も。MDPI+3日本理学療法士協会+3Frontiers+3

つまり:

  • 腰痛・肩こり・猫背・反り腰など「体の不調+姿勢の崩れ」がある人には、ピラティスの方が得意分野と言えます。


3-2. 筋トレの姿勢・機能面の効果

筋トレも、筋力・筋持久力・移動能力の向上、転倒予防など、機能面の改善に高い効果があります。LWW Journals+2PubMed+2

ただし、

  • フォームが悪い

  • 姿勢の土台が崩れたまま重い負荷をかける

と、

  • 首や腰を痛める

  • 特定の筋肉だけ硬くなる

  • もともとの歪みが強調される

といったマイナスが出る可能性もあります。

否定的に言えば:

  • 「姿勢が悪いまま筋トレで上から盛る」と、かえってバランスが悪くなるリスクがあります。

結論:

  • 姿勢がある程度整っている人なら、筋トレだけでも問題ない場合もありますが、

  • 姿勢や痛みが気になる人は、ピラティスなどで“一度リセット”してから筋トレに入る方が安全・効率的と言えます。


4. メンタル・生活習慣・続けやすさの視点

4-1. ピラティスのメンタル面のメリット

リフォーマーピラティスが

  • うつ症状

  • 不安

を減らしたという研究もあり、ピラティスがメンタル面にも良い影響を与える可能性が示されています。Nature

呼吸に集中し、体を丁寧に動かすスタイルは、

  • 自律神経を落ち着かせる

  • 「自分の体を大事にしている感覚」が得られる

など、ストレスが強い現代人には相性が良い側面もあります。


4-2. 筋トレのメンタル・自己効力感

一方で、筋トレも

  • 重量が伸びる

  • 見た目で変化が分かる

ことにより、

  • 自信がつく

  • 「自分は変われる」という自己効力感が上がる

という強いメンタル効果があります。健康面でも、筋トレが加齢による機能低下・生活習慣病・メンタルヘルスに良い影響を与えるという報告が増えています。LWW Journals+1

ここは“好み”の要素が大きく、「どちらが優れている」とは言い切れません。

  • 静かにじっくり整える時間が好き → ピラティス寄り

  • 数値や重量で分かりやすく成長を感じたい → 筋トレ寄り

という分かれ方をすることが多いです。


5. 目的別:「どっちが効果的か」の現実的ライン

ここからは、「こういう目的ならこういう可能性が高い」という形で整理します。(※医療的な診断・治療の推奨ではなく、一般的なフィットネスの話です)

5-1. とにかく体重を落としたい・体脂肪を減らしたい

  • 筋トレ+有酸素+食事管理がメイン

  • ピラティスは

    • 「何もしていない状態」よりは十分効果が期待できますが、

    • 大幅減量だけを目的にするならサブポジションになる可能性が高いです。PMC+1


5-2. 猫背・反り腰・肩こり・腰痛を何とかしたい

  • ピラティス優位の可能性が高い

  • 筋トレだけで改善するケースもゼロではありませんが、

    • 誤ったフォームで悪化するリスクもあり、グレー度が高いです。


5-3. 美尻・美脚・美しいボディラインを作りたい

  • 「ボリュームを出す」「丸みを作る」→ 筋トレ(ヒップスラスト、スクワット、ランジなど)が必須級

  • 「細く見せる・長く見せる・ラインを整える」→ ピラティス+軽い筋トレが現実的な組み合わせ


5-4. 運動初心者・怖がりな人・過去にケガ経験がある人

  • ピラティススタートが無難な可能性が高い

    • 動きの範囲がコントロールされており、安全性が高い

    • 体幹や関節の安定性を高めたうえで筋トレに進める

もちろん、「パーソナルでしっかりフォームを見てもらえる筋トレ環境」であれば、最初から筋トレでも問題ないケースもあります。


5-5. 現実的な“最適解”

  • 土台(姿勢・体幹・動き) → ピラティスで整える

  • 強化(筋力・筋量・代謝) → 筋トレで鍛える

この流れが、

  • 理論上も

  • 研究データ的にも

  • 実務(現場)感覚としても

もっとも納得感のある「現実解」だと言えます。


6. ジムとピラティス、どう選べばいい?

最後に、実際に選ぶときのチェックポイントです。

6-1. まず「自分の優先順位」をはっきりさせる

  • 体重・体脂肪を減らしたい

  • 痛みや不調を減らしたい

  • 姿勢や動作をきれいにしたい

  • 見た目のメリハリをつけたい

  • メンタルを整えたい

  • とにかく何か始めたい

1〜2個に絞ると、選びやすくなります。


6-2. 現在の体の状態

  • 慢性的な痛み(腰・膝・肩など)があるか

  • 医師から特別な運動制限が出ているか

  • 体力レベル(階段で息切れするか、等)

ここがグレーな場合は、無理をせず、医師・理学療法士・有資格トレーナーに相談するのが安全です。


6-3. “続けられそうな方”を選ぶ

  • 雰囲気が好きか(スタジオ・ジムの空気感)

  • インストラクター・トレーナーと合いそうか

  • 立地・料金・予約の取りやすさ

科学的にはどちらもメリットがありますが、「続けられない運動」は効果が出ないのも現実です。


7. まとめ:どちらが効果ある?への答え

ここまでの内容を、できるだけシンプルにまとめます。

  1. 痩せたいだけなら?

    • 体脂肪をしっかり落とすという点では、→ 筋トレ+有酸素+食事管理が主役になる可能性が高いです。Wiley Online Library+2PubMed+2

  2. 姿勢や痛みを何とかしたいなら?

  3. 美しいライン・メリハリを作りたいなら?

    • ピラティスで整えつつ、筋トレでボリュームと代謝を上げるのが現実的です。

  4. どちらか一方だけに絞る必要はない

    • 「ピラティス vs 筋トレ」ではなく→ 「ピラティス × 筋トレ」の組み合わせが、もっとも効果的な可能性があります。

  5. 分からない部分もある

    • 研究はサンプルや条件が限られており、「あなた個人にとってどちらがベストか」は、実際に試してみないと分からない部分も大きいです。

    • だからこそ、少しずつ両方に触れて、自分の体の反応を観察するのがいちばん確実です。


参考文献(抜粋)

  • Wang Y et al. Pilates for Overweight or Obesity: A Meta-Analysis. 2021.PMC

  • Pereira MJ et al. Efficacy of Pilates in Functional Body Composition. 2022.MDPI

  • Lopez P et al. Resistance training effectiveness on body composition and adipose tissue in overweight and obese individuals. 2022.PubMed+1

  • Wewege MA et al. Effect of resistance exercise on body composition. 2022.PubMed

  • Jayedi A et al. Aerobic Exercise and Weight Loss in Adults: A Systematic Review and Meta-analysis. 2024.JAMA Network

  • Li F et al. Effects of Pilates exercises on spine deformities and posture. 2024.BioMed Central

  • Fernández-Rodríguez R et al. Pilates, Strength, Core-Based, and Mind-Body. A Network Meta-Analysis. 2022.日本理学療法士協会

  • Garber CE et al. ACSM position stand on exercise for developing and maintaining fitness. 2011.PubMed

  • Abou Sawan S et al. The Health Benefits of Resistance Exercise: Beyond Hypertrophy. 2023.LWW Journals

(※他にも複数のRCT・レビューを参考にしています)


 
 
 

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